狭心症

【狭心症とはどんな病気?】

図1

狭心症とは、心臓の冠動脈[かんどうみゃく]が詰まって狭くなり、十分な酸素や栄養分が届かなくなる病気です。

冠動脈(冠状動脈とも呼ばれます)は、心臓を動かす筋肉である心筋に酸素と栄養分を送る血管で、大動脈から分岐し、心筋を外側から覆うようにして走っています(※図1)。右冠状動脈と左冠状動脈がありますが、後者はさらに左前下行枝[ひだりぜんかこうし]と左回旋枝[ひだりかいせんし]に分かれます。
この3本の冠動脈のうち、1本が詰まった状態を1枝病変、2本を2枝病変、3本すべてが詰まった状態を3枝病変と呼びます。言うまでもなく、詰まった箇所が多いほど重篤です。


●狭心症と心筋梗塞の違い

狭心症によく似た病気に心筋梗塞がありますが、狭心症は冠動脈が狭まった(いくらかは血流がある)状態であるのに対し、心筋梗塞は冠動脈が塞がってしまった(血流がなくなってしまった)状態です。
血管が塞がってしまうと、酸素と栄養分が来ないため、詰まった先の心筋が壊死[えし]してしまいます。壊死した心筋は再生しません。したがって、心筋梗塞のほうがより危険で重篤です。胸の痛みや圧迫感は、狭心症では、数分から長くて15分程度と一時的ですが、心筋梗塞では30分以上継続し、安静にしていても治まりません。

かつては、狭心症から心筋梗塞へと進む、と考えられていましたが、現在、必ずしもそうではなく、狭心症ではない人が突然心筋梗塞を起こすケースが、かなりあることが分かってきました。


●狭心症の種類

①安定狭心症(労作[ろうさ]性狭心症)

階段を上がったり、重いものを持ったり、運動をしたり、心理的なストレスを受けたりしたときに、胸に痛みや圧迫感を覚えます。力仕事や運動をしたり、ストレスを感じたりすると、それに応じて、体内にたくさんの血液を送り出そうと心筋が活発に働き始めますが、血管が細っていて血液供給が追いつかず、胸の痛みなどの症状が出るのです。毎回、ほぼ同じ程度の運動やストレスで生じます。カッコ内の病名にある「労作」とは、日常動作や運動などで体を動かすことです。

②不安定狭心症

安定狭心症と違い、痛みが強くなる、発作の回数が増える、少しの動作や安静状態でも発作が起こるといった、痛みや圧迫感のパターンが変化します。それまで症状が安定していた人にそうした変化が現われたら、危険です。冠動脈が急速に狭まりつつあることを示している可能性があるからで、こうした場合は、医療機関と連絡をとってください。

③異型狭心症

夜、寝ているとき(特に明け方)や、昼間、安静にしているときに、胸が苦しくなる発作を起こします。多くの場合、冠動脈が一時的に痙攣[けいれん]を起こして収縮し(この状態を「攣縮[れんしゅく]」と言います)、血流を途絶えさせることによって起こります。大した動脈硬化がないのに起こることがあります。


●原因

狭心症の原因は、ほとんどが動脈硬化です。動脈硬化とは、高血圧その他のさまざまな要因で血管が柔軟性を失い、硬くなってしまった状態です。動脈硬化が進むと、血管の厚みが増し、血管を狭めます。

また、コレステロール等が溜まって、血管壁の内側に、脂質(脂肪分)から成るコブのようなものができます。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が血液中に増えすぎると、傷のついた内皮細胞(動脈壁を形作っている一番内側の細胞)のすき間からLDLコレステロールが血管壁の内側に入り込み、それを退治しようとする免疫細胞や、その他の細胞も入り込んで、コブのように膨れ上がります(※図2)。

図2

こうしたコブを「プラーク」と言います(プラークとはアテローム(粥腫[じゅくしゅ])の隆起したものです)。プラークが大きくなって破れると、そこに急速に血の塊(血栓)ができ、血管が塞がれてしまいます。この状態が心筋梗塞です。


●前兆

狭心症の前兆は、胸の痛みや、胸が締めつけられるような圧迫感です。しかし、安静にしていれば治まることが多いので、軽く考えて放置してしまう人が少なくありません。胸の違和感や軽い痛み、あるいは胸が締めつけられるような強い痛みが一度でもあったら、狭心症や心筋梗塞を疑って医師に相談したほうがいいでしょう。以下のようなリスク要因を抱えていると、発症しやすいと言われています。

・高血圧
・肥満(外見には痩せていても内臓のまわりに脂肪が付いている内臓脂肪型肥満=メタボリック症候群=も、リスク要因の一つです)
・糖尿病
・高脂血症(コレステロール値が高い状態)
・高尿酸血症(痛風などと言われたことのある方に当てはまります)
・ストレス
・喫煙
・家族歴

以上のリスク要因が多いほど男性なら50歳以上、女性なら60歳以上の人は、狭心症や心筋梗塞を発症する可能性が高いので、要注意です。

●狭心症の診断

狭心症の診断にはいくつかの方法があります。症状やリスク因子から狭心症が疑われたら、心電図、レントゲン、心臓エコー検査、ホルター心電図(24時間の心電図観察が外来で通常生活をしながらできます)。これら痛みや苦痛を伴わない検査を行い治療が開始されます。大半の患者さんはここまでで治療が開始され、改善が認められない場合は造影剤を使用したCT検査、放射線を用いた核医学検査、心臓へカテーテルといわれる「細いくだ」を挿入して内部監察を行うこととなります。


●狭心症の治療

まず行う治療は前述したリスク因子の治療となります。優れた治療は沢山ありますが、最も大切なのことはリスク因子で治療可能なものは治療、生活改善をおこないます。その上で必要な内服治療が開始されます。内服治療でも症状が改善しない場合、検査結果が芳しくない場合は侵襲的な検査治療が選択されます。