腎動脈狭窄症

腎臓の働き

腎臓は長さ10-12cm、横幅5cm、厚み3cmのソラマメのような扁平な形をした臓器で、腰の上部に左右2個あります。一つが約150g前後、2つ合わせても300gに過ぎず、体重の0.5~0.6%の小さな臓器にもかかわらず、安静時に心臓から全身へ送られる血液の約20%が流れ、健康な生活をするうえで重要な働きを行っています。その働きは、1)尿を排泄することで全身の水分量を調節し、2)不要となった老廃物を尿の形で排泄し、3)血圧の調節、血液の産生を調整するホルモン分泌作用を持っています。腎動脈が細くなり、腎臓への血流が低下すると、これら重要な働きに障害が出てしまいます。腎動脈が細くならないように予防することが重要ですが、細くなってしまったら早い段階で発見し、適切な治療をすることが必要です。

●腎動脈狭窄症の原因とその結果
 腎動脈の狭窄の頻度は、軽症なものも含めると意外に多く、高齢者の場合6%前後に狭窄を持つ人がいるといわれています。  腎動脈が細くなる原因として、その90%以上は加齢に伴う動脈硬化です。残りの10%弱は比較的若年者に見られる、動脈硬化によらない腎動脈狭窄症で線維筋性異形成症と呼ばれています。その他、大動脈炎症候群、大動脈解離、血栓症、腹部大動脈瘤などが報告されています。腎動脈が細くなっても、腎臓への血流量や腎臓への血圧が低下しなければ腎臓の働きに障害は起きません。一般的には70~80%以上細くなって、はじめて障害が起きるといわれています。高度の狭窄の結果、1)腎血管性高血圧、2)腎機能障害、3)心不全の急激な悪化などが起きる可能性があります。

●腎動脈狭窄症はどのような人で疑われるか
 中ぐらいまでの腎動脈狭窄症は、別の目的で検査を行ったときに偶然見つかることが多く、体に悪い影響は与えませんので治療の必要はありません。経過観察でとなります。腎動脈がさらに細くなって体に悪い影響を与えている可能性を疑うのは、若年で高血圧が発症した人、急に高血圧になった人、これまで血圧が安定していたのに急に血圧のコントロールが悪くなった人などです。

●腎動脈狭窄症の検査
腎動脈エコー:腎動脈の血流速度を測定する方法です。外来で非侵襲的に、繰り返し行うことができます。腎動脈狭窄症において幅広く利用されています。 その他、CT,MRIなども検査手段として有用です。

●腎動脈狭窄症の治療
原因により異なりますが、まず降圧剤による血圧管理が行われます。その上で腎カ動脈狭窄の程度によりカテーテルを用いた血管内治療、場合によっては手術療法が選択されることもあります。